おまえはもう書かれている

先人の知恵は偉大なり。

ニコニコ超会議2015

日曜日の開演時刻にこの劇場の前を通って見ると大変な人の群が場前の鋪道を埋めて車道まではみ出している。これだけの人数が一人一人これから切符を買って這入るのでは、全部が入場するまでに一体どのくらい時間が掛かるかちょっと見当がつかない。人ごとながら気になった。(寺田寅彦「マーカス・ショーとレビュー式教育」)

 

我々は顔を知らずに他の人とつき合うことができる。手紙、伝言等の言語的表現がその媒介をしてくれる。しかしその場合にはただ相手の顔を知らないだけであって、相手に顔がないと思っているのではない。多くの場合には言語に表現せられた相手の態度から、あるいは文字における表情から、無意識的に相手の顔が想像せられている。それは通例きわめて漠然としたものであるが、それでも直接逢った時に予期との合不合をはっきり感じさせるほどの力強いものである。
和辻哲郎「面とペルソナ」)

 

私の旅行というのは、人が時空と因果の外に飛翔し得る唯一の瞬間、即ちあの夢と現実との境界線を巧みに利用し、主観の構成する自由な世界に遊ぶのである。
萩原朔太郎散文詩風な小説」)

 

何千人の、あるいは何万人のファンを持つていますと人に数字を挙げて説明のできることははたして幸福だろうか。
零から何万にまで増えてきた数字は、都合によつてまた元の零に減るときがないとはいえないのである。
私は時によつて増えたり減つたりする定めなきものを相手として仕事をする気にはなれないのである。
伊丹万作『「ファン」について』)

 

役にさえ立たなければいじめられはしないのだ。自分の仲間だけ繁昌すればそれでいいではないか。俺達を見ろ。役に立つ処でなく世間の毒になるのだ。
夢野久作「きのこ会議」)